こどもの泌尿器科について
泌尿器科は、尿が作られる腎臓、尿が体の外に排泄される際の通り道である尿管、膀胱、尿道といった尿路、精巣・陰茎、子宮・腟などの内・外性器の疾患の診療を行っています。こどもの泌尿器科では成人と異なる特有の疾患がありますし、成人と同様の疾患でも検査や治療方法が違ってくるため、小児泌尿器科として診療しています。お子様の包茎や性器の痛み、頻尿、夜尿症(おねしょ)などもまた、小児泌尿器科で治療を行っています。
また、当院では早期の適切な治療が重要な小児腎臓病科の専門的な治療も行っています。
お子様の泌尿器に関するお悩みやトラブルがありましたら、お気軽にご相談ください。
学校の健康診断で検尿の異常を指摘されたら必ず受診を
腎臓の主な働きは血液をろ過して尿を作ることです。ろ過を行っている糸球体が炎症を起こすと血尿やたんぱく尿を出す糸球体腎炎になります。長期間こうした状態が続く慢性糸球体腎炎は、小中学生の罹患率が0.05%前後ですからかなりまれですが、このうち約70~80%が学校で受けた検尿によって発見されています。
検尿ではむくみや食欲不振などの症状が現れる早期の段階で発見することができるため、深刻な病状にならずに治療できる可能性が高くなります。実際、学校検尿が全国に普及した昭和54年度を境に、慢性糸球体腎炎で小児期の腎不全発症を起こすこどもの数が減少しています。
学校などで受けた尿検査で異常を指摘されたら、できるだけ早く診察を受けるようにしてください。
血尿とたんぱく尿
一般的な検尿で調べることができ、血尿やたんぱく尿があった場合には腎臓などの泌尿器疾患が隠れている可能性がかなり高いと言えます。血尿は肉眼ではわからない場合もありますが、検尿では尿中の赤血球を調べるため微量でも正確に診断できます。たんぱく尿は尿中に含まれるたんぱく質の量を計測できるため、腎臓病の重症度の判断に役立ちます。
腎臓以外の小児泌尿器科
尿検査で血尿やたんぱく尿を指摘された以外の小児の泌尿器トラブルは、男女で異なる症状や疾患が多いため、男女別の代表的な症状をご紹介します。下記のような症状に気付いたらご相談ください。
男の子の症状
- ペニスが痛い、あるいは痒い様子を見せる
- ペニスの先が腫れて赤い
- 包茎でペニスの皮がむけない。
- ペニスの色や大きさ、形、匂いなどが気になる
- 睾丸の様子が通常とは異なる気がする。
- 小学校に上がったのに、おねしょをすることがある
- 昼間におしっこを漏らすことがある
- おしっこの色や匂い、回数などが通常とは異なる
など
女の子の症状
- 股の部分が痛い、あるいは痒い様子を見せる
- おしっこが出にくく、痛そうな様子がある
- おしっこに血が混じっている
- おねしょがなかなか治らない
- おしっこの色や匂い、回数などが通常とは異なる
など
小児泌尿器科の症状別疾患
包茎
ペニスの先である亀頭部分が包皮で覆われたままで露出しない状態です。亀頭にそって包皮を引き下げることで亀頭が露出する場合は仮性包茎で、これは正常であり心配ありません。
乳幼児期には包茎であることが通常で、この時期のペニスは生理的包茎と呼ばれます。成長するにつれて次第にむけるようになり、個人差はありますが17歳頃になるとほとんどの方がむけるようになります。
注意したいこどもの包茎
乳幼児はほとんどが包茎ですが、成人しても包皮がむけない真正包茎の場合には治療が必要になるケースがあります。真正包茎は輪になっている包皮口が狭いことで生じています。ほとんどの場合、思春期まで経過観察してから対応を考えますが、例外的に幼いうちの手術が必要なケースもあります。包茎だけでなく下記のような症状がありましたら、小児泌尿器科を受診してください。
包皮口が狭く排尿困難をともなう
包皮内に尿がたまって風船のように膨らむため、排尿困難をきたして膀胱や腎臓にダメージを与える可能性があります。
繰り返し亀頭包皮炎になる
包茎の場合、包皮と亀頭の間に恥垢がたまりやすく、そこで菌が増殖して感染します。ペニスの先が腫れて赤くなり、排尿時に痛みを生じる場合もあります。1年間に3回程度でしたら抗生剤を使った治療で特に問題はありませんが、何度も繰り返すようでしたら手術も検討する必要があります。
嵌頓包茎を起こした
たまたま何かの拍子に包皮がむけた際に、包皮輪が狭いと亀頭が強く締め付けられる嵌頓包茎を起こすことがあります。亀頭がむくんで痛みを生じますので、うまく亀頭が包皮内に戻らない場合にはすぐに泌尿器科を受診してください。
真性包茎で思春期を過ぎた
むける時期には個人差がありますが、病気などのリスクが高くなるため1度泌尿器科に相談することをおすすめしています。
亀頭包皮炎
ペニスの痛みという症状で1番多い疾患は、亀頭包皮炎です。亀頭と包皮の間に細菌が感染して炎症を起こしており、腫れて赤くなる、触れた時や排尿時の痛みといった症状があります、ペニスの先から黄色い膿が出ることもあり、下着の汚れで気付くケースもあります。
乳幼児のペニスは生理的包茎といって包皮と亀頭が癒着しているため包皮をむくことができません。そのため、恥垢がたまりやすく、尿で汚れるため衛生を保つのが難しくなっており、感染を起こしやすい場所です。成長につれて体力や免疫力もアップしていき、包皮がむけるようになると衛生を保ちやすくなるため発症頻度は減っていきます。
泌尿器科を受診して適切な処置と治療を受ければ回復しますので、赤みや腫れに気付いたら早めにいらしてください。また、再発を防ぐためには清潔を保つことが重要ですから、汚れた手でペニスを触らないように注意してあげましょう。
こどもの膀胱炎
大腸菌などの細菌が尿道口から侵入して膀胱粘膜に感染して炎症を起こしている状態です。炎症によって尿道や膀胱が刺激を受けると排尿中枢にも刺激が及び、頻尿の症状につながります。他の症状には排尿時の痛みがあります。高熱が出た場合には膀胱炎が進行して感染が広がり、腎盂腎炎になっている可能性もありますので、できるだけ早く泌尿器科を受診してください。
泌尿器科では痛みや負担のない採尿などの検査で膀胱炎を診断できます。合う抗生剤を使用することで比較的短期間に回復しますので、トイレの際に痛がっている様子がみられたらすぐにいらしてください。ただし、症状が回復しても抗生剤は最後まで飲み切ることが不可欠です。
夜尿症(おねしょ)について
小学校入学前後の5~6歳を過ぎても「おねしょ」が続いている状態を夜尿症と呼びます。原因は夜間の尿量が多い多尿型、膀胱にためられる尿量が少ない膀胱型、睡眠と覚醒の障害が主なものになっています。5~6歳で約10~20%、小学校低学年で約10%、10歳児で約5~7%に夜尿症があるとされており、成人になっても続くケースもまれにあります。
コンプレックスになって合宿や旅行などを楽しめなくなるケースがありますし、何らかの基礎疾患が隠れている可能性もありますので、小学校入学を控えた時期に夜尿症があるようでしたら泌尿器科受診をおすすめしています。現在は有効な薬物療法、生活指導、行動療法(アラーム療法)がありますし、間違った指導やしつけでかえって治りにくくしてしまうこともありますので、お気軽にご相談ください。