尿の濁りについて
健康な場合の尿は透明で黄色っぽい色をしていますが、病気などが原因になって尿が白く濁る尿白濁が起こることがあります。尿白濁の原因には大きく分けて、尿中の塩類結晶化、尿路の細菌感染、血尿の3つがあります。加えて、女性の場合、おりものが混じって濁って見えることもありますが、この場合、尿の色自体に問題はありません。
尿が濁る原因
食生活
特定の食品をとり過ぎることで尿が濁る場合があります。ほうれん草のようなアクの強い野菜・ココア・バナナなどに多く含まれるシュウ酸、動物性脂肪の多い肉類などのたんぱく質をとり過ぎると、尿中にシュウ酸カルシウムの結晶ができやすく、それによって尿が白濁することがあります。結石リスクが高い状態ですので食生活を見直す必要はありますが、この場合の尿の濁り自体には問題がありません。
女性特有の濁り
おりものや生理の血液が尿に混じって濁って見えることがあります。性器の痒み、排尿時の痛みなどがなく、一過性で次回からは濁りがないようでしたら特に心配はありません。ただし、女性は膀胱炎が多く、慢性の場合には痛みなどの症状が乏しいため、濁りが続くようでしたら受診してください。
性行為などで起こる性感染症
性行為を介して感染する性感染症の症状として尿が濁ることがあります。最近では、10歳代の淋菌、クラミジアなどの性感染症(STD)増加が報告されていますが、将来の不妊や母子感染につながる可能性があるため注意が必要です。症状に男女差があるため、症状がなくてもパートナーが感染していた場合、必ず受診してしっかり治療を受けてください。
血尿による尿の濁り
細菌感染による炎症や結石によって尿路が傷付くと血尿が起きることがあります。肉眼で見て血尿とわからないことも多いのですが、検尿で確認できます。また、肉眼では赤く見えなくても血液が混ざることで濁って見えるケースもあります。
尿の濁りを起こす主な疾患
尿管や膀胱の結石、腎盂腎炎(じんうじんえん)・膀胱炎・尿道炎など尿路の感染症、性感染症や腎結核、進行した前立腺がん、腎臓がん、膀胱がんなどで尿が濁る症状が現れます。尿路の感染症では進行して化膿すると膿が混じって尿の濁りが強くなります。
腎臓結石・尿管結石
腎臓でできたシュウ酸や尿酸などの結石が狭い尿管に下りてきて粘膜を傷付けるため、尿が濁る、血尿、排尿に時間がかかる、頻尿、残尿感などの症状が現れます。背中やわき腹にいきなり激痛が起こることもあり、冷や汗や吐き気、嘔吐といった症状が起こることもあります。
腎盂腎炎
腎臓が細菌感染して炎症を起こしている状態で、尿に白血球が多く混じるようになるため尿が白濁します。排尿痛があり、高熱や血尿、背中や腰の痛み、吐き気、嘔吐などが起こることもあります。冷えによる免疫力低下や繰り返す膀胱炎によって感染が広がって起こることがあり、女性に多くなっています。
急性膀胱炎
代表的な症状はトイレの回数が増える頻尿、排尿の最後に起こる鋭い痛み、尿混濁や血尿などです。主な原因が尿道口から侵入した細菌が膀胱粘膜に感染して炎症を起こすことなので、尿道が短い女性に多い病気です。再発しやすいため注意が必要です。間質性膀胱炎では、尿がたまった際に痛みが生じるケースがあり、慢性膀胱炎では排尿痛がほとんどないこともあります。
尿道炎
主な原因は性交渉による淋菌やクラミジア菌などの感染で、男性に多く、尿道に急性の炎症が起こっている状態です。排尿痛や膿が混ざって尿が白濁する症状が現れることがあります。淋菌やクラミジア菌は性感染症ですから、症状がないパートナーの方も治療が不可欠です。なお、尿道炎は放置していると尿道が狭窄して排尿できなくなることもあります。早めに受診して適切な治療を受けてください。
淋菌感染症
淋菌という細菌によって起こる性感染症です。男性の場合は尿の出初めに強い痛みがあり、尿に黄色い膿が混ざるため尿の白濁も起こります。女性が感染した場合は、感染数日後に外陰部の痒みやおりものがある程度で自覚症状がほとんどないため感染に気付かず、慢性化するケースが多くなっています。妊娠している時に感染していると新生児にも感染して結膜炎による失明の可能性もあります。
性器クラミジア感染症
クラミジアという細菌によって起こる性感染症で、男性では、尿の出初めに軽くしみるような痛みがあり薄い色の膿が少量出て、尿が白濁することがあります。女性の性感染症で最も多いのですが、自覚症状がほとんどなく感染に気付かないことがよくありますが、不妊の原因になる可能性がありますし、妊娠した場合も出産の際に母子感染して重い肺炎や結膜炎を起こす可能性もあります。
前立腺炎
男性にある前立腺に起こる炎症です。20~30代の若年層の発症が多くなっています。最初、尿の出初めに軽い排尿痛があり、頻尿や残尿感なども生じます。炎症がひどくなると排尿痛が強くなって下腹部痛や倦怠感、悪寒、高熱、膿が混じることによる尿の白濁が起こることもあります。前立腺炎をきっかけにして前立腺肥大症を発症するケースもありますので、しっかり治療を受けて治しましょう。
腎結核
結核菌の感染では肺結核が起こりますが、結核菌が血流を介して腎臓に感染した場合には腎結核を引き起こします。初期症状は尿の濁りで他の症状はありません。進行すると腎臓に膿がたまっていって尿の濁りが強くなり、40℃以上の高熱や下腹部の強い痛みを生じるようになります。
前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん
初期の自覚症状に乏しいのですが、肉眼ではわからない程度の血尿によって尿が濁ることがあります。早期発見と適切な治療にはとても重要ですので、検尿で異常が指摘されたら、できるだけ早く泌尿器科を受診してください。進行すると排尿困難や残尿感などが現れはじめ、肉眼で確認できる血尿や脳の強い濁り、尿がまったく出なくなる尿閉、勃起不全などの症状が現れます。
なお、前立腺がんは腫瘍マーカーによる早期発見が有効です。簡単な検査ですので、リスクの高まる40歳を超えたら検査をおすすめしています。
尿の濁りを起こさないために
尿の濁りに気付いたら、必ず泌尿器科を受診してください。女性で性感染症が疑われる場合には泌尿器科だけでなく婦人科の受診でも構いません。ご自分に症状がほとんどない場合でもパートナーが性感染症になったらご自分も必ず受診してください。
食生活の注意
最初は尿の濁り程度でおさまっていても、結石ができるリスクがとても高くなってしまうため、動物性たんぱく質とシュウ酸を多く含む食品をとり過ぎないよう注意してください。シュウ酸はほうれん草やゴボウ、タケノコなどのアクが強い野菜やココア、バナナにも多く含まれています。
また、クエン酸やマグネシウムを多くとると、尿に含まれるシュウ酸とカルシウムの濃度低下につながるため、柑橘類や緑黄色野菜を積極的にとるようにしてください。
加えて、尿酸カルシウムの結石による尿の濁りでは、プリン体を多く含む食品を控える必要があります。プリン体はビールをはじめとしたアルコール類、レバー、牛肉、あん肝、イクラなどに多く含まれています。痛風の予防にも役立ちますのでとり過ぎに注意しましょう。
性交渉時にはコンドームを使用しましょう
コンドームの使用は効果的な性感染症対策です。ただし、コンドームの使用でも防ぐことができないケースもありますので、パートナーとともに、正しい知識を身に付けるようにしてください。